
最近太陽光発電の発電量が少ない気がする…しかしどうやって原因を把握すればいいかわからないなぁ。
太陽光発電の発電量の異常の原因は、実は遠隔監視システムのデータを解析すれば把握できます。

遠隔監視システムのデータなら見てるよ。特に異常は見当たらないけど。
原因を把握するには、遠隔監視システムのデータを「見るだけ」ではなく、「解析」する必要があります。
エナジービジョンでは、累計3,000件以上のメンテナンス実績を元に、遠隔監視システムのデータを解析し発電量が正常か見る「発電量解析」を実施しています。
今まで発電量解析を行ってきた中、年間20万円や40万円等高額な損失を出していた発電所を多々見てきました。
残り15年間売電期間がある発電所において年間30万円の損失が出ていると仮定すると、なんと15年間で450万円の損をすることになります。
発電量解析をすることで、緩慢な発電量の低下も早期に発見でき、このような高額な損失を出すことも防げます。
ぜひこの記事を読んで損失を回避してくださいね。

エナジービジョンで行っている「発電量解析」の手法を丁寧に解説します。ぜひ参考にしてみてくださいね。
目次
発電量解析とは
発電量解析とは、監視開始から現在までの遠隔監視システムの全データを解析することで、発電所が本来の性能を発揮し正常な発電量が得られているかを確認できる技術です。
日射量変化・季節ごとの傾向・経年劣化を差し引いて、発電所設備が100%の性能を出せているかを確認します。
瞬間的な発電量に問題がなくても、年間2%等の緩慢な発電量が低下している原因も発見します。
これから発電量解析の解析プロセスを解説していきますが、ひとまず受けてみたい!という方は毎月20名まで無料で提供しています。
気になる方は以下のリンクからお申し込みください!
発電量解析の3つの手順
エナジービジョンの発電量解析は主に3つの手順で行っています。
- 12ヶ月移動平均
- パワーコンディショナー別・時間帯別発電量の相対比較
- 完成図書、点検報告書、現場写真の確認
12ヶ月移動平均で発電量に異常がないか確認し、パワーコンディショナー別・時間帯別発電量の相対比較で原因を探ります。
加えて、完成図書、点検報告書、現場写真も確認し原因を推定していきます。
以下から、「2015年発電開始、システム容量49.9kWp、売電単価36円/kWh」という条件の茨城県の低圧発電所Hの事例を基に、それぞれどのような手順で行うか解説していきますね。
発電量解析では、kW(キロワット)とkWh(キロワットアワー)の違いを理解していることを前提としています。違いがよくわからない方は先にkWとkWの違いの章をご確認ください。
発電量解析 1 : 発電量の12ヶ月移動平均を行う方法
ではまず12ヶ月移動平均をどのように行うかについてです。
1:月間発電量のグラフを作る
以下のH発電所の遠隔監視システムから月間発電量(kWh)を出力し、グラフ化しました。

パッと見たところH発電所の発電量に問題があるかはわかりません。
毎年12~1月に発電量が最低となり、4~7月の間で発電量が最高となる山形であるのは見て取れますが、どんな問題があるかはこのグラフだけでは判断できません。
強いて言えば毎年発電量の底値が段々下がっていっているのと、直近数ヶ月の発電量が下がってるのが気になるぐらいでしょうか
では次に日射量のグラフと重ね合わせてみます。
2:日射量のグラフと月間発電量のグラフを重ね合わせる
次に日射量のグラフと発電量グラフを重ね合わせてみます。
日射量のデータは、気象庁のサイトからダウンロードできます。
気象庁のデータのダウンロード方法については後の章で解説していますので参考にしてみてください。
日射量は全国約44箇所のみの掲載です。発電所所在地の日射量データが掲載されていない場合は、最も近隣の都市を選んで検索し参考にしてみてください。
月間日射量と月間発電量を重ね合わせたグラフを作成する
月別の日射量をスプレッドシートの機能でグラフ化することで折れ線グラフを作成できます。
以下はダウンロードした日射量と発電量を重ね合わせてグラフを作成したものです。

日射量と発電量はほぼ比例しています。
日射量と比例していれば問題ないのでは?と思いますよね。
本当にそうでしょうか。
さらに問題を探るため、発電開始の初月の発電効率を100%として毎月の増減を比較したグラフを作成しましょう。
3:発電効率の増減を比較したグラフを作成する
左の縦軸の初月開始時を100%として毎月の発電効率の増減を比較したグラフを作成しました。

ここで用いる発電効率は発電量を日射量で割った値を用います。
発電効率を求める計算式
発電効率 = 月間発電量 ÷ 月間日射量
例えば、H発電所の例では2021年1月の月間発電量が4900kWhで、全天日射量が9.2MJ/㎡だったため、
4900kWh ÷ 9.2 = 532
となります。
初月の発電効率を100%として、それぞれの月で計算して導いた発電効率を指数化してプロットしたものが先に示したグラフになります。
発電効率の増減を比較したグラフでは、やはり少しずつ発電量が低下しているようにも見えます。
初月の発電効率を100%として各月の発電効率を指数化するプロセスについては、エクセルでデータを作成しています。詳しくはUsing Excelさんの指数化をご確認ください。
4:12ヶ月移動平均のグラフを作成する
では最後に12ヶ月移動平均グラフを作成して見てみます。
12ヶ月移動平均グラフとは、「1年分の発電効率を足し12で割った値=1年間の平均発電効率」を、開始月を1ヶ月ずつずらしてプロットしたグラフになります。
例えば、2021年1〜12月の発電効率を足し12で割った値、次に2021年2月〜2023年1月までの発電効率を足して12で割った値、と1ヶ月ずつずらして順次計算しプロットしていきます。
以下が12ヶ月移動平均をグラフ化したものです。

12ヶ月移動平均グラフにすると、1つの点が年間平均発電効率を表しているので、季節変動の影響はなくなっています。
その結果、年ごとの発電効率の推移だけを見ることができ、少しずつですが確実に右肩下がりとなっていることがわかります。
次に12ヶ月移動平均グラフを基に発電効率の下がり具合を計算してみます。
移動平均の計算はWinスクールさんの「移動平均と季節調整でデータの本質を見極める」の記事で詳しく解説されているのでより詳しく知りたい方は参考にしてください。
5:12ヶ月移動平均のグラフを基に発電効率を計算する
以下のように、ピーク時の発電効率、直近の発電効率を計算します。

例では、2016年7月のピークの119.3%と比べ、直近では108.2%まで下がっています。
直近の発電効率を、ピーク時の発電効率で割ると90.7%となり、ほぼ−10%発電量が低下しているのがわかりますね。
売電単価が36円のため、発電量から売電金額を計算し、ピーク時の発電効率と比べると、直近1年間で250,444円もの損失を出しています。
通常、太陽光発電システムの経年劣化による年間発電量の低下は−1%未満と言われています。
上記事例では、約5年で−10%発電量が低下しており、年換算では-2%程度となり、なんらかの異常があると考えられます。
発電量をただ眺めるだけだったり、発電量を日射量データと照らし合わせるだけではこの緩慢な発電量低下は確認できません。
ここまでで月ごとの総発電量を軸に比較することで異常な低下があることを発見してきました。
ではどこに原因がありそうか調べるために、さらにパワーコンディショナー別に相対比較をしていきます。
発電量解析 2:パワーコンディショナー別・時間帯別発電量の相対比較
ここから12ヶ月移動平均で見えた、発電量低下の原因をパワーコンディショナーのデータで探ってみます。
パワーコンディショナー別の発電量の比較では、一番安定しているパワーコンディショナーを基準として相対比較をしていきます。
H発電所では5台のパワーコンディショナーを使用しています。
1台目のパワーコンディショナー(PCS1)の発電量を基準として100%とした時、他のパワーコンディショナー(PCS2〜5)の発電量の推移を重ね合わせたものを作成します。
※以下各パワーコンディショナーをPCS1〜5として解説していきます。

上記グラフの時間帯は12時で、3年前から直近の月までを表示しています。
今回は12時の時間帯を取り上げていますが、他の時間帯でも異常がないか確認します。
グラフからPCS1の発電量と比べて、PCS3〜5の発電量が徐々に低下しているのがわかります。
PCS3、PCS4、PCS5のグラフからは、
- 季節による周期性がある
- 徐々に影響が増大している
- PCSごとに異なる差が発生している
などが読み取れます。
経験に基づく仮説となりますが、このようなグラフを描く場合は、雑草の繁茂(はんも)の影響が疑われます。
ここまででパワーコンディショナーの相対比較によって雑草に原因がありそうだと推定してきました。
さらに、「完成図書」や「点検報告書」、「現場写真」からも発電量低下の要因を推定していきます。
発電量解析 3:完成図書、点検報告書、現場写真の確認
完成図書、点検報告書、現場写真で特に確認するポイントについて解説していきます。
完成図書で確認するポイント
完成図書では、
- パワコンの台数
- パワコンごとに接続されているパネルの総容量
- パネル・パワコンの配置位置
- 発電所周囲の状況
などを確認します。
まずパワコンの台数を確認し、遠隔監視に表示されていないパワコンがないか調べます。
パワコンが完全に停止している場合、そのパワコンの存在自体がなかったことになってしまう遠隔監視もあるからです。
次に、パワコンごとのパネル総容量を確認します。
パワコンごとの発電量の差があったとしても、元々のパネル容量の違い、ということもあるからです。
そして、パネル・パワコンの配置位置と発電所周囲の状況を確認し、発電量が低いパワコンがどこに位置するのか、発電量を低下させる要因として何が考えられるか、を検討します。
点検報告書で確認するポイント
点検報告書では、
- 完成図書と現場の点検報告書の整合性
- 電気的な点検によるパネル故障の有無
- すでに指摘されている不具合
などを確認します。
完成図書と点検報告書を確認することで、設計どおりに施工されているか、をチェックします。
嘘のような話ですが、
- パネルが設計図書と違うものが設置されていた
- パネルの枚数が間違っていた
- 設置されている位置が違った
という施工上のミスが散見されます。
また電気的な点検の結果からパネル故障が発電量低下に影響を与えているのか、その他、すでに指摘されている不具合も要因となっているのか、など確認します。
現場写真で確認するポイント
現場写真では、
- 雑草の状況
- パネルの汚れ具合
- 周囲の状況
- 地盤の状況
などを確認します。
雑草は写真撮影後も日々成長するので、現時点でパネルにどのぐらい影を掛けそうか、想定しながら確認。
また、発電量低下を引き起こす程度にまでパネルが汚れているか、もチェックします。
周囲の状況は、構外の樹木や雑草、電柱、山陰などパネル上に影を掛けるようなものの有無を確認します。
地盤の状況は、発電量の異常のためよりも発電所が倒壊しないか、という安全性の観点から見ます。
以上のような点を確認することで、12ヶ月の移動平均法、パワーコンディショナー間の相対比較のデータと照らし合わせて問題の切り分けを行います。
発電量解析を行う3つのメリット
ここからは発電量解析を行うメリットについて解説していきます。
電気的点検の回数を減らせ、メンテナンス費用を削減できる
太陽光発電のメンテナンスにおいて、通常電気的点検は1年に1回は必要と思われていました。
しかし発電量解析を行うことで発電量の低下を把握できるため、低下していなければ電気的点検は4年に1回で十分となります。
電気的点検は高価な専用機器が必要、かつ豊富な経験を持った技術者が行うため、コストがかかるのが難点。
電気的点検の回数を減らすことで、メンテナンスコストを削減することができます。
闇雲に電気的点検を削減することでコストを削減すると、発電量の低下を招きかねません。
発電量解析を行うことで、発電量を異常に減らし損失を出すことなくコスト削減ができます。
常に最大の発電量を維持でき収益率向上・収入向上ができる
解説した通り、発電量解析は日射量・季節要因を差し引いて、その発電所の発電量が適正かを見ることができます。
適正でない場合、都度原因を確認し対応するため、常に最大の発電量を維持することになります。
結果的に売電収入の向上につながります。
メンテナンスをしていない発電所はもちろんのこと、今まで販売店の無料のメンテナンスで対応していた発電所でも、損失が出ているケースが多いのが実状です。
発電量解析をすることで「気づいていない損失」を防ぐことができます。
現場に行かずとも日常的に点検ができる
従来の方法で発電所の状態を把握するには、現場に行かないとできません。
遠隔監視システムにはアラート通知の機能もありますが、その信頼性は遠隔監視ごとに様々。
皆さんがよく知っている遠隔監視でも、パワコンが停止していてもアラートを通知しないものは少なくありません。
アラート通知を過信するのは危険です。
アラート通知に頼り切りではなく、発電量解析の手法を併用することで、現場にいかなくても発電所の異常を発見できます。
発電量解析だけで100%原因を把握できるわけではないですが、現場に行かなくても問題の発見と原因の推定はできます。
遠隔地にある発電所の場合、現場に行くだけで交通費がかかってしまいます。
発電量解析ができれば、遠隔地であっても現場での点検を最小限に抑えつつ、発電所の状況をしっかり把握できます。
以上の通り、発電量解析をすることでメンテナンス費用の削減、発電量アップによる売電収入の向上が期待できます。
ご自分で行うのは難しいかもしれませんが、やってみよう!と思われる方はぜひチャレンジしてみてください。
エナジービジョンでは発電量解析を毎月20名まで無料モニターを募集しています。
発電量が少ない原因がわからず困っている方や、もっと詳しく知りたい方向けに、無料相談会も開催しています。
以下のリンク先から申し込みいただけます。ぜひこの機会にお試しください!
気象庁の日射量の過去データのダウンロード方法
以下から簡単に気象庁の日射量の過去データのダウンロード方法について解説していきますね。
ちょっとわかりにくいですが、順を追って行えば誰でもダウンロードできます。
1.「地点を選ぶ」から地点を選択します。都道府県を選び、表示された都市で近いところをクリックします。例では東京を指定しています。

都道府県を選ぶと、選べる市町村名が表示されます。表示したい市町村名をクリックし、選択します。選択すると右側の「選択された地点」に選択した地点名が表示されます。

2.「項目を選ぶ」をクリックしたあと、データの種類欄から「月別値」を選び、「日照/日射」タブから「付き平均全天日射量」にチェックを入れます。
チェックを入れると右側の「選択された項目」に「月平均全天日射量」が表示されます。

3.「期間を選ぶ」をクリックし、出力したい期間を選択します。画像の例では2021年8月から2022年の8月までの月別値を選択しています。
あまりに長い期間だとデータ量の上限に達してしまうため注意してください。
データ量の上限は右上の「選択済みのデータ量」で表示されます。

4.「表示オプションを選ぶ」では特に設定の変更は必要ありません。そのままの状態で「CSVファイルをダウンロード」をクリックします。

以上でCSVファイルがダウンロードできます。ファイルを開くと以下のように「平均全天日射量」が月ごとに並んでいます。


発電所所在地の日射量データがない場合、近隣のデータを活用する際に「距離が離れていると日射量に差があるのでは」と疑問に思われるかもしれませんが、弊社で検証したところ近隣県の日射量には、ほとんど差異はありませんでした。ご心配なくご利用ください。
ダウンロード方法についてより詳しく知りたい方は気象庁のヘルプページも参考にしてください。
発電量解析では、kWとkWhの違いを理解していることを前提としています。
「イマイチよくわかっていない」という方は以下の章を参考に読まれると理解が深まります。
kW(キロワット)とkWh(キロワットアワー)の違い
まずそれぞれの単位について簡易に解説しますね。
kW(キロワット)とは
発電量を示す単位として、「kW(キロワット)」が使われます。
kWは瞬間に発電される電力を表す単位で、1kW(キロワット)=1000W(ワット)です。
太陽光発電では、kW(キロワット)を見ることで、今この瞬間にどれだけ発電しているかがわかります。
kWh(キロワットアワー)とは
kWh(キロワットアワー)は、電力(W)に時間(Hour)をかけて示される電力量を表す単位です。
電力会社でも、電気代の請求に使用しています。
太陽光発電では、kWh(キロワットアワー)を見ることで、累積でどれだけの発電量があったかがわかります。
太陽光発電で「発電量」と言う時、通常kWではなく、このkWhを用います。

kWhは正確には「発電電力量」が正しいのですが、慣例上「発電量」と言うことが多くあります
発電事業で大事なのはkWh(キロワットアワー)
多くの方が「発電量を見る」と言う時、kWのみを見ている場合が多いですが、実際はkWhを確認するのが重要。
「kW」を見ても、今の瞬間にどれだけ発電しているかの把握に過ぎず、発電量の低下の原因を探ることはできません。
売電金額は「kWh(キロワットアワー)」の累計値に売電単価を掛けて算出します。
発電事業の収支に大きな影響を与えるのはkWではなくkWhの方なのです。
分かりやすく車で例えると、
- kW:現在走行中の車の速度
- kWh:走った距離
となります。
車でも速度計を見るだけでは、その瞬間の速度はわかりますが、それまでどのくらいの時間を掛けてどれだけの距離を走ってきたのかはわかりません。
走った距離が時間に対して多いのか少ないのか、少ないとしたら何が原因と想定できるか、などは速度計を見るだけで判断できないですよね。
例えば最高速度に到達するまでの時間がとても遅い車と、すぐに到達する車があったとします。
どちらも最高速度が100km出る場合、最高速度だけで比較しても優劣は分かりません。
しかし、時間当たりの走行距離を比べてみれば一目瞭然でしょう。
このようにkWとkWhを確認するのは大きく違うということを理解することが大事です。
ここまで読まれた方は、知識としては申し分ありません。
発電量解析をすることでメンテナンス費用の削減、発電量アップによる売電収入の向上が期待できます。
難しいかもしれませんが、やってみよう!と思われる方はぜひチャレンジしてみてください。
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