「売電収入を把握するために1日の発電量の計算方法が知りたい」
「業者のシュミレーション通りの発電量か確認したい」
この記事ではこんな疑問を解決します。
エナジービジョンでは太陽光メンテナンスを2015年から7年間で約700基以上の発電所のメンテナンスを行ってきました。
その経験とノウハウを元に発電量の計算方法と、発電量をより大きくするためのポイントを解説します。
この記事を読めば発電量の計算方法が分かり、売電収入の把握もより正確に行うことができるようになります。
また最後には無料で発電所について相談できるサービスも案内しています。
ぜひ最後まで読み進めてみてくださいね。
発電量を計算できるようになり、ご自身で売電収入の目安がわかるよう丁寧に解説していきますね。
目次
システム容量1kWの太陽光発電の年間発電量は約1,000kWh
太陽光発電では売電収入は発電量に比例します。
そのため発電量を正確に把握することが重要になってきます。
太陽光発電協会(JPEA)によると太陽光パネルの出力容量1kWあたりの年間発電量は約1,000kWhが目安とされています。
年間発電量1,000kWhを基準として、1日あたりの平均発電量を算出した場合は約2.7kWh。
また1ヶ月あたりの平均発電量は約83kWhです。
もちろん「平均」とあるようにこれらの数値はあくまで目安になります。
実際は日射量や発電所の所在地、パネルの種類、また経過年数によっても発電量は変動します。
正確な発電量を把握するには、専門業者に依頼するのが一番確かですが、ご自分でも計算できるように以下から解説していきます。
以下からの解説はkW(キロワット)とkWh(キロワット時)の違いを知っている前提で解説していきます。ご存知ない方は先に「kWとkWhの違いとは」をご参照ください。
太陽光発電の1日の発電量の計算の仕方
NEDO(独立行政法人 新エネルギー産業技術総合開発機構)が発行している、太陽光発電導入ガイドブックを基に、年間予想発電量の計算方法を説明します。
年間予想発電量は以下の式で導けます。
年間発電量の計算式
年間予想発電量(kWh/年)= 接地面の1日あたりの年平均日射量(kWh/㎡/日)× 損失係数 × システム容量(kW)× 365 ÷ 1(標準状態における日射強度 kW/㎡)
損失係数とは、太陽光パネルの種類、パネルに付着した汚れ、温度上昇等による出力の損失を見込んで掛ける数値のことです。
NEDOによると損失係数は0.73としています。
0.73の損失係数をかけるということは、年間予想発電量が27%減ることになります。
NEDOとしては、平均してー27%ほど発電量が減る、と考えているということですね。
ただ実際には、メーカーによる違いや設置の仕方などで損失係数は大きく変わってきます。
過積載の太陽光発電の1日の発電量の計算の仕方
最近の野立て発電所では、「過積載」が主流となっています。
過積載とはパネル容量をパワコン容量よりも大幅に多く設置する手法です。
過積載では朝晩や雨・曇など日射量が少ない時の発電量を増やし、晴天時にパワコン容量をオーバーしてしまった分は捨ててしまいます。
この容量をオーバーした分を捨てることを「ピークカット」と呼びます。
ピークカットをしたとしても、年間を通しての総発電量は増やせる、という考えを基にした設計思想です。
過積載の場合、ピークカットを計算に組み込むことが必要となるため、計算式が変わります。
具体的には、前出の式の『システム容量』のところを、『パネル容量×ピークカット係数』に置き換えて計算します。
過積載の計算例
年間予想発電量(kWh/年)= 接地面の1日あたりの年平均日射量(kWh/㎡/日)× 損失係数 × パネル容量(kW)× ピークカット係数 × 365 ÷ 1(標準状態における日射強度 kW/㎡)
という式になります。
パネル容量に、ピークカット係数(過積載率によって変わる、パネル容量100kWの場合、0.85程度)をかけることで、ピークカットで捨ててしまう分を考慮しています。
太陽光発電システム50kWの発電量と収支計算のモデルケース
説明した計算式を用いて発電量を計算したモデルケースを紹介します。
以下一般的な野立ての太陽光発電所と、過積載の太陽光発電所とそれぞれ解説していきます。
一般的な野立て太陽光発電所の場合
先ほど紹介した計算式で次のような条件で計算してみましょう。
- 設置エリア:東京
- システム容量:50kW
- 接地面の1日あたりの年平均日射量;3.67kWh/㎡/日(2020年7月~2021年6月の東京の数値、気象庁データより)
上記の条件を計算式に当てはめると、
一般的な野立て太陽光発電所の計算例
3.67kWh/㎡/日 × 50kW × 0.73 × 365 ÷ 1 = 48,893kWh/年(年間予測発電量)
となり、東京にある50kWの発電所の年間予測発電量は48,893kWhと計算できます。
JPEAによる「1kWあたり年間1,000kWh」というざっくりとした目安とも、ほぼ整合します。
過積載の野立て太陽光発電所の場合
以下のような条件で計算してみましょう。
- 設置エリア:東京
- 低圧発電所(パネル容量100kW、パワコン50kW)
- ピークカット係数 0.85
上記の条件で計算すると、
過積載の野立て太陽光発電所の計算例
3.67kWh/㎡/日 × 100kW × 0.85 × 073 × 365 ÷ 1 = 83,119kWh/年(年間予測発電量)
となります。
ただし実際の発電量は発電所により様々です。設置エリアによる日射量の違いや、損失係数やピークカット係数の違いなどが大きく影響するからです。
以下にいくつか実例をあげます。すべて低圧発電所(パワコンは50kW)を想定した数値です。
- 栃木県 パネル容量78kW 93,000kWh/年
- 千葉県 パネル容量105kW 102,700kWh/年
- 石川県 パネル容量103.5kW 93,000kWh/年
- 兵庫県 パネル容量86kW 112,000kWh/年
- 大分県 パネル容量110kW 113,000kWh/年
低圧発電所で100kW程度の過積載の場合、年間10万kWh前後が基準になり、条件が非常に良い時で12万kWhぐらいが目安となります。
NEDOによる計算式の結果などのシミュレーション値は保守的に出すことが多いため、実際の発電量が上回る場合が多くあります。
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回収年数の計算の仕方
発電量を計算できれば、投資に対する回収年数も計算できます。
回収年数を計算するためには、まずは売電金額を知る必要があります。
全量売電の場合、売電金額は発電量に売電単価をかけた金額になります。
売電金額の計算式(全量売電の場合)
売電金額 = 発電量 × 売電単価
年間発電量が10万kWhで売電単価が27円ならば年間の売電金額は270万円、18円なら180万円、14円なら140万円となります。
そして回収年数は、シンプルに考えれば、購入費用を年間売電金額で割った式で表せます。
2000万円で買った発電所で年間270万円の売電金額ならば、7.4年で元が取れる、という計算になります。
ただし、実際は発電所を運用管理する経費も必要なので、
回収年数の計算式
回収年数 = 購入費用÷(年間売電金額-経費)
という式の方が実態に合っています。
経費には保険料やメンテナンス費用、税金、改修費用などが含まれます。
kW(キロワット)とkWh(キロワット時)の違いとは
発電量を計算する上で、知っておきたいのがkW(キロワット)とkWh(キロワット時)の違いです。
kW(キロワット)は、「瞬間の発電量の大きさ」であり、「瞬間的にどれだけ発電できる能力を持っているか」を示す単位。
対してkWh(キロワット時)は、「1時間あたりに得られる発電量」。
1kWhであれば、「1kWの発電を1時間続けることで得られる発電量」になります。
自動車で例えるのであれば、今現在の速度がkW(キロワット)、1時間あたりにどれだけの距離を走ったかがkWh(キロワット時)と言えます。
自動車のハンドル奥には速度計と速度距離計がありますが、それぞれ速度と移動距離を指し示していますよね。
kW(キロワット)とkWh(キロワット時)についても同様に考えることができます。
注意したいのが、適切な発電量かどうか確認するためには、1時間あたりの発電量を示すkWh(キロワット時)の方が重要になってくるという点。
こちらも自動車で例えればわかりやすいです。
速度計で瞬間の速度を見ても、時間に対して走行距離が多いのか少ないのか、距離が少ないとしたら何が原因と想定できるかがわかりません。
不具合を見るためには「本来は時速100キロメートルを維持できるはずなのに、走った時間と距離で計算すると時速60キロメートルでしか走れていなかった。」など、ある程度の期間で見る必要があります。
発電量を把握するためにはkWh(キロワット時)の方が大切なことを押さえておきましょう。
季節・時間帯・気候で太陽光発電の発電量は変わる
太陽光発電の年間発電量は、設置エリア、季節、天候、時間帯によって変化します。
各要因によって発電量がどう変化するかそれぞれ解説していきますね。
季節による発電量の変化
季節によって日照時間が変わるため、発電量は変化します。
太陽光発電の月間平均発電量が最も多い月は5月です。
8月が一番多く発電しそうと思われるかもしれませんが、5月の方が多くなります。
実は、気温が高いとパネルの発電効率が低下するんです。
パネル温度が2度上昇する度に、発電効率は1%ずつ低下!
真夏のパネル温度は80度以上になることもあり、30%近く発電効率が下がってしまう時間もあります。※
気温が低く日射量がほどほどに多いため5月が一番発電効率が高くなるんですね。
ただし、近年の気候変動の影響により季節ごとの日射量もだいぶ変わってきています。
5月なのに晴天日が少ない、などということもあり得るため、一概には「5月が発電量が高い」と言えなくなってきています。
※定格出力は25度を基準としています
時間帯による発電量の変化
1日の中での発電量をグラフ化すると、日照が最大ピークとなる12時を頂点として、山形の弧を描きます。
11時〜13時の時間帯では1日の4割の発電をします。
ただし、過積載率が高い場合は、朝から発電量がピークとなり夕方までその状態をキープする、台形のグラフになります。
天候による発電量の変化
太陽光発電の発電量は、晴天時にもっとも大きくなります。
曇り空の時であっても、日射量は晴天時の半分程度はあり、発電も同じく半分程度期待できます。
日射量には直接光が当たる、「直接日射量」と、大気中に充満している関節的な日射の「散乱日射量」があります。
この「散乱日射量」が曇り空の時でも存在するから発電されるんですね。
ただ雨や雪の時にはさらに雲が厚くなるため、散乱日射量も減り、発電量が1kWhにも満たない日もあります。
空が暗くなるほどの大雨の場合は、日中なのに発電量がゼロになることも。
ただし過積載率が高い場合は、曇りや雨の日でも発電します。
過積載の割合が高い発電所においては、曇や雨の時でも発電量の低下が防ぎやすい特性があります。
発電量を効率化し最も大きな発電量を得るためのポイント
発電量を最大化するためには、太陽光発電の発電効率を高める必要があります。
以下から発電効率を高めるためにできるポイントについて解説していきます。
最初に紹介する3つのポイントは全て施工前にチェックすべきポイントになります。
既に施工済みの方は最後のポイントを確認してください。
変換効率の高い太陽光パネルを採用する
「変換効率」とは「太陽光パネルが太陽光エネルギーをどれくらい電気エネルギーに変換できるか」を示すものです。
発電効率が高い太陽光パネルほど、発電量も大きくなります。
最近は表裏の両面で発電できる両面パネルなど、さらに発電効率を高くできるパネルも登場しています。
発電効率は各メーカー毎に変わってきますので、必ずパネルを選ぶ際は発電効率をチェックしましょう。
太陽光パネルの向きを最適化する
基本的には、太陽光パネルの向きを真南に設置することで、より多くの太陽光をパネルに当てることができ、発電量が大きくなります。
ただし場所によっては、太陽光パネルを真南に設置できないケースもあります。
また、パネルの設置枚数を多くすることができる平置きや東西設置など、新しい設計思想も出てきています。
パネル1枚ずつの発電効率は若干下がったとしても、枚数を多くすることでトータルでの発電量を増やす、という考え方です。
専門家の助言を仰ぎながら1枚あたりの発電効率だけにとらわれずに、全体のバランスを考えた設計を検討しましょう。
設置角度を最適化する
太陽光発電では、太陽光パネルに対して直射日光が直角に近いほどより多く発電することができます。
できる限り直角に日光が当たるよう、太陽光パネルの設置角度を調整することが大事です。
日本での平均としては、一番発電効率がよい設置角度は30度と言われています。
ただし地域、季節、パネルの向きによって太陽光の入射角度が変わってくるため、最適な設置角度は変わってきます。
また最近の設計思想として、パネルの設置角度を多少犠牲にしても設置枚数を増やした方が総発電量は増える、という考え方もあります。
設置角度についても専門家の意見を聞きつつ、どのような設計思想か確認した上で検討することをオススメします。
メンテナンスをしっかり行う
太陽光の発電量を継続して最大化するためには、メンテナンスが必要不可欠です。
メンテナンスは費用がかかることで敬遠する方もいるかもしれませんが、メンテナンスをしないことで売電収入が下がるケースが多々見受けられます。
メンテナンスをしないと、急なパワーコンディショナーの停止に気づかなかったり、パネルの汚れや草木の影によって発電量が大きく下がっていることにも気づけません。
メンテナンスをしないことで費用の削減ができたとしても、何らかのトラブルが発生したにも関わらず長期間気付かなかった場合、大きな損失が発生してしまいます。
必要最低限のメンテナンスに費用をかけた方が結局はお得になります。
詳しくは太陽光発電メンテナンス費用について解説した記事を参考にしてください。
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